徒然なるままに

あるがままを生きる

出会いの不思議


一生のうちに1度や2度は信じられないような奇遇な出会いを経験した人は多いと思う。筆者自身も大学時代に奇跡的な出会いがあった(「青春時代の思い出」)。その他にも、偶然とは思えないような出会いを何回か経験したことがある。これを、超常現象と片付けてしまうのは安直であり、科学の健全な進歩にとっても好ましいことではない。このような不思議な出会いに対する科学的な視点からのアプローチをまとめた書籍があったので紹介したい。タイトルは「複雑な世界、単純な法則(Small Worlds and the Groundbreaking Science of Networks)、著者は著名な「ネイチャー」誌などの編集をつとめたマーク・ブキャナンである。



本書ではいくつかの研究例が紹介されている。例えば、コーネル大学の数学者ワッツは、「もの」の集まりのつなぎ合わせ方に関する問題を扱うグラフ理論に基づいて、知人や友人を6段階(6次の隔たり)たどっていくと、世界中の60億の人を緊密に結びつけることができることを示した。また、数学者のエルディッシュによると、世界中のすべての人とつながりを持つためには、1人が24人を知っていればよいということを示した。しかし、これは世界中の人がランダムにつながっていることを前提にしたものであるが、現実の社会は地域的につながり(強い絆)を持っておりランダムではない。しかし、ジョン・ホプキンス大学のグラノヴェターは、「強い絆」で結ばれているクラスターが互いに「弱い絆」で結ばれていれば、隔たり次数に関して「強い絆」は重要でないと述べている。


このように、複雑で縁遠いように見える世界中の人々との絆も、数学的に見ると単純な理論によって結ばれているのだろう。しかし、世界中のすべての人々がわずか6次の隔たりでつながれているとしても、それはあくまでも間接的なつながりであって、冒頭に述べたような不思議な出会いがなぜ起こるのかについて説明していることにはならない。もっと奥深い自然の原理が隠されているのではないだろうか。


本書では、複雑な世界も実は単純な法則で成り立っている(スモールワールドの)事例として、「蛍の同時発光」、「脳の構造」、「インターネット」、「感染症の流行」、「経済活動」、「ネットワーク社会」等多くの事例を挙げている。


社会現象の科学的研究は人の精神作用に関連するところもあり、これまでタブー視されてきた側面がある。したがって、その研究内容は一般に広く認知されているとは言い難い。しかし、自然科学の進歩と相俟って研究が盛んになり、やがて歴史的な大発見がなされる時代がくるのではないだろうか。



本書は筆者が自己相似性(フラクタル)の文献を検索しているときに出会ったものである。まさか、その文献に出会いの不思議について書かれているとは想像していなかった。

物だけでなく人の精神から発せられる様々な現象もフラクタル構造をしているのではないだろうか。株価の時間的推移がフラクタル構造をしているのもその表れであろう。前掲の「情報と秩序_生命の誕生と進化の原理」 において紹介した、情報の成長の基本的メカニズムと経済成長のメカニズムの類似性もその一つである。また、フラクタルと密接に関係している1/fゆらぎに、人がやすらぎを感じるのもその表れだろう。

ミクロの世界から宇宙まで、さらに物質から精神まで、すべては統一した原理で成り立っており、その一つがフラクタル構造ではないだろうか。それよりもフラクタル構造がなぜ存在するのか、その本質を知ることのほうが意義のあることだと思う。ひょっとすると「不思議な出会い」の謎を解くヒントが隠されているかも知れない。自由きままに思考を巡らしてみたい。





難題のあとの気分転換

 ベランダから部屋に入ってキーボードに座り込んでしまった野良のララ(♀)、せっかく書いた記事が消失してしまった!

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